2020年仙台・宮城新型コロナウイルスクラスター分析
2020年は仙台市・宮城県で50箇所の新型コロナウイルスのクラスターが発生した。
最初のクラスターは2020年4月、仙台市青葉区の英国風パブでの発生であった。パブでは県外の利用客を含めて9人が感染した。ALT(外国語指導助手)の感染などが報じられた。また、感染源ははっきりしないが、一緒に店を訪れたグループ以外にも感染が広がったことから、新型コロナウイルスの感染力の強さが印象づけられた。
最も大きなクラスターは、10月に仙台市の専門学校で発生したクラスターであった。感染者数113人と、全国的にも注目された。外国人の生徒が暮らす寮が、密集・密接の環境となっていて、感染が広がったことが影響しているということであった。
(市町村別)
2020年のクラスターのうち、約6割の29箇所が発生したのが仙台市であった。宮城県の人口や機能の大部分が仙台市に集中しているのであるから、この結果には驚きはない。
仙台市に続くのは4箇所で発生した登米市である。人口比でいえば石巻市や大崎市などで多く発生しそうであるが、それほど人口が多くない登米市でクラスターが多く発生したの意外である。しかも、登米市のクラスターは12月の1ヶ月で発生しており、ペースが急に上がっている。飲食店での発生が半分を占めており、自粛生活の長期化が気の緩みにつながったのかもしれない。
登米市は12月で一気に4箇所もクラスターが発生して市町村別の発生で2位となったが、それに続いて、名取市、石巻市、多賀城市、利府町、塩釜市、大崎市など、人口が比較的多いまたは仙台市近郊の市町村でクラスターが2〜3件程度発生した。
(種類別)
次にクラスターが発生した場所を種類別にみてみる。
50箇所のうち、約6割(28箇所)は飲食店で発生している。最初の英国風パブでは店名が公表されたので、全て公表されるのかと思ったが、クラスターが発生しても接触者が特定されている場合には店名は公表されない。店名が公表された飲食店はその後の営業に深刻な影響を受けるであろう。店名が公表されたのは、28箇所のうち8箇所であり、それほど多くはなかった。
飲食店でも酒類を提供する店、接待を伴う飲食店でクラスターが数多く発生した印象がある。1つの店で感染者が最も多く発生したのは、10月に発生したホストクラブで、52人もの感染となったのは衝撃であった。新型コロナウイルスに対して、マスクを外して無防備な状態で会話をすることは限りなく危険な行為だと分かる。出来る限り集団での会食を避け、ウイルスに無防備な時間をつくらないことが重要である。
飲食店に続いて多かったのは高齢者施設で、10箇所であった。高齢者施設では、10月までは2件の発生であったが、11月以降で8件が発生した。寒く乾燥する季節になったことでウイルスの感染力が高まった可能性がある。公表されている高齢者施設の内訳では、デイサービスセンターが3箇所、有料老人ホームなどの入居系施設が3箇所となっている。高齢者が集団で生活している施設で感染が広がって死者が出ている。こうした施設では感染予防に十分に努める必要があり、関係者の苦労は想像を超えるものとなっているだろう。
学校や医療機関での発生が比較的少なかったのは幸いであった。特に医療機関である。仙台市の整形外科で1件発生したが、新型コロナウイルス患者の治療の最前線の医療機関でクラスターが発生すれば、医療崩壊につながる。最前線の医療従事者の方々には敬意を表する。感染に気をつけて治療に尽力していただきたい。